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★スペシャルインタビュー
FictionJunction 『elemental』 梶浦由記ロングインタビュー Part4
セルフカヴァー中心だった1stから約4年9ヶ月。梶浦由記の個人ユニット、FictionJunctionが2ndアルバムをリリース。
新録4曲は既存曲とのバランスをとることもせず、“根本”から湧き出した、まさに梶浦の現本質。
そんな新曲だが、ノンタイアップということで語る機会の少ないということで、微に入り細を穿つように細かくご教授いただいた。作曲家梶浦由記の遊び心やこだわりを感じ取ってほしい。
今までの梶浦パターンに沿っていない曲だったんです
――レコーディングはいかがでしたか? FJはいつも早いということですが。
梶浦 さすがに「elemental」は時間がかかったかな。あと、「story-」も今までのパターンにある程度沿った曲ではなかったので。その意味では「凱歌」は早かったです。皆が「梶浦さんのこのメロならこう歌っておけばいいでしょ」って分かっているので。
――「story-」であった、そのズレというのは?
梶浦 言い方は悪いですけど「可愛く歌っておけばいいんでしょ」ってなっちゃってたんですよね。(主メロの)Kaoriちゃんもちょっと可愛すぎましたけど、特にハモですね。「story」ってAメロの下と上にハモがかぶってくるんですけど、あれがちょっとでも重いとスピード感が出ないし、可愛くなるとものすごく可愛くなっちゃう。こちらの中にあるイメージをKeikoちゃんとKaidaさんに伝えるのに苦労しました。Kaidaさんのハイ(=高い)ハモなんて、いつもなら二回ぐらい歌えば終わっちゃうんですけど、今回は「もうちょっと可愛くしてみて」「明るく」「大人っぽくしたらどうなる」という感じで、五、六パターンは試しました。それに、ちょっと前ノリにハモってくれないと軽快感が出ない曲なんですよ。でも、私の曲って後ろノリの曲が多いので、普通にやると皆、ちょっと後ろにハモってくれるんですよ。だから、「ごめん、今回はそれじゃ後ろ過ぎる」「(主メロの)頭にタイトなハモは置いてくれないとスピード感が出ない」って言って。あの二人にしては時間かかりましたね。
――「elemental」もレコーディングに時間がかかったということでしたが。
梶浦 「elemental」は「Kaoriちゃんでいこう」って決めてた曲なんですよ。勿論4人でハモりたいというのはあったけど、Kaoriちゃんがいなければやろうと思わなかった曲で……。
――彼女の何が?
梶浦 「リズム」ですね。あの子は本当にリズムがいいし、めちゃくちゃ歌が上手いんですよ。そういう人が中心にいてくれないとあの曲は出来ない。だから、「elemental」はKaoriちゃんに仮歌を上から下まで歌ってもらって、リズムを全部作ってもらいました。それを基調に全員で合わせたんですよ。そうじゃないとあのグルーヴは出せない。グルーヴ感とかリズム感に関しては舌を巻くぐらいにすごいので。あの人は。
――ジャズもやってましたしね。
梶浦 そうですね。“つかみ”がいいんですよね。このリズムだとバンドのどこにこれを入れたらグッと来る、みたいなのが分かってるんですよ。そういうのは説明しても出来ないし、できる人は説明しなくてもやってくれるし。上手すぎる時もたまにありますけどね。「もうちょっと弾けろよ」みたいな。「elemental」でも、思っていたよりも綺麗に歌い過ぎて。「もっと乱暴に」とか「もっとグルーヴ出して」という話をして、何度もガツガツに歌ってもらいました。「綺麗に収めちゃダメだよ、上手いんだから」というところなんですけど、でも、上手すぎて困るというのも大変なことですよね。
――そこにハモるのに時間がかかった感じですか?
梶浦 あの曲も変なところにタイミングを置いていて。一斉に歌うと合わせるのも楽なんでしょうけど、あのグルーヴをレコーディングで合わせるのはちょっと大変でしたね。Kaoriちゃんに歌ってもらった後は緻密に合わせていく作業になったんですけど、だからといって勢いがなくなってもつまらないので、ガーッと歌いつつ合わせてくみたいな、ちょっと難しいレコーディングになりました。だから「elemental」が一番時間がかかりましたね。四人で合計10時間ぐらいやってました。Keikoちゃんもさすがに「elemental」ではKaoriちゃんのグルーヴと合わせるのに、いつもよりは時間かかったかもしれないです。でも、あの人は「何歌わせても安定の人」なので(笑)。Kaidaさんは、高いし、高いところで乗り出さなきゃいけないし、大変なところなんですけど、神速でした(笑)。(レコーディングの)時間も多くとっていたんですけどね。「姉さん、かっこいい!」「んー、かっこいい?」とか言いながら録って、楽しかったです。
つづく
Text/清水耕司(ボーグナイン
2014/02/06 13:00:00