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梶浦由記、ツアーの集大成ともいうべき追加公演のレポ到着「変わらないことを守りぬくことを大事にしたい」
2015.07.21 14:32
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連続テレビ小説「花子とアン」の音楽を担当したことも記憶に新しいマルチコンポーザー・梶浦由記のライブツアー“Yuki Kajiura LIVE vol.#12”より、2015年7月18日(土)渋谷Bunkamura オーチャードホールにて開催された追加公演“オーチャードSpecial”の初日のレポートが到着した。
6月10日の東京国際フォーラムを皮切りに、9日間11公演が行われた今回のツアーは、それぞれの公演が「日本語オンリー」「日本語封印」「サウンドトラック」と分類され、総楽曲数も3公演で80曲以上というボリューム感溢れる内容に。そして追加公演では、それぞれのスタイルを1日分に集約し、それぞれの公演で活躍したミュージシャンが一堂に集結。さらに、ストリングスも追加され、総計20名という大所帯を率いての情熱溢れるライブとなった。
●「曲数を減らしても減らしきれない。かなりの曲数をやります」
照明が落ち、ステンドグラス調のライトが照らす中、アコーディオンが鳴り響く。つづいてパーカッションが加わり、ラテン調の音楽を力強く奏でてこの日のオープニングを飾った。そして荘厳なSEとともにメンバーが登場するとオーディエンスは大きな拍手で応える。つづいてイーリアン・パイプス(バグパイプの一種)のケルティックな音が会場を包み、「花子とアン」のサウンドトラックより「My Story」のメロディを響かせ、さらに今野均ストリングスによるカルテットと、パーカッション、ギター、フルートが加わり広大なイメージを展開する。そしてここでWAKANA、YURIKO KAIDA(以下、YURIKO)、KEIKO、KAORIらYuki Kajiura LIVE、レギュラーボーカリストの4人の歌姫が洋建築をイメージしたセットの上に登場し「歴史秘話ヒストリア」のテーマをオリジナルの造語バージョンで高らかに歌い上げた。
最初のMCで梶浦は「曲数を減らしても減らしきれない。かなりの曲数をやります」とプログラムを説明すると会場からは拍手喝采。そして「余計なMCはカットしますので、歌とか演奏でその人の人間性を推し測ってください(笑)」と話す。さらにゲストボーカルとして戸丸華江を紹介。戸丸はYURIKOとともに「世界里山紀行」のメインテーマで見事なボーカルワークをこなし、さらにフルートとストリングスが優雅なメロディを響かせ、ドラムとエレキギターは大地の力強さを表現する。ステージのライトは森林をイメージした緑から紫へと変わり、「lotus」のエスニックなパーカッションにつづいてボーカル隊はゆっくりとハーモニーを響かせ、そこに弦が加わって華やかに彩ったかと思うと静かに楽曲を締めくくる緩急ぶりだ。明るいドラミングに印象的な弦のリフレインで始まるのは「Fate/ZERO」の「let the stars fall down」。YURIKOと戸丸のハーモニーも美しい。
●ユニット“See-Saw”のセルフカバーも
再び梶浦はMCで「疲れ果ててスタジオに行ってもプレイヤーさんたちの素晴らしい演奏が喜びを与えてくれる」と語り、フロントメンバーとの結びつきを紹介する。つづいては「魔法少女まどか☆マギカ」より「Decretum」を物悲しく、「Symposium magarum」では不穏さを迫力たっぷりにバンドサウンドで表現。つづいては梶浦のユニットSee-Sawからのセルフカバー曲「黄昏の海」をKEIKOを中心にカバー。和風のメロディと無国籍なサウンドの融合は現在からするとやや珍しい部類の楽曲だ。「花守の丘」では静謐なピアノから入り、ワルツのサウンドにKAORIを中心としたコーラスワークが響き渡る。「水の証」ではピアノとカルテットの伴奏にWAKANAがイノセントな声を聴かせ、「光の行方」は荘厳で美しいコーラスからアップテンポに転調し激しいドラミングが引っ張るという梶浦サウンドの真骨頂を披露。そこからYURIKOとKAORIの穏やかなボーカルで締めくくる姿は前半のクライマックスでとりわけ大きな拍手が湧いた。
ゲストボーカルのRemiによるイタリア語のピアノ曲「Rainbow~Main Theme~」は同映画のテーマ曲で、この日もっとも古い楽曲だという(1999年発表)。こうした貴重な楽曲を入れ込んでくるのもこの日のライブの特性だ。次の楽曲は「ソードアート・オンライン」BGM。これまで音源番号で呼ばれていた楽曲で、今回の追加公演に合わせて「moon and shadow」と名付けられた6/8拍子の楽曲。YURIKO・KAORI・Remiによる美しいコーラスにフルートやパーカッションが続き、ファンタジックな雰囲気を醸し出す。人気の「everytime you kissed me」はKAORIがメインボーカルを担当し、WAKANA、YURIKO、KEIKO、がハモリを順次リレーしていく、彼女たちのボーカルワークを贅沢に味わえる楽曲だ。KEIKOの深い歌声にKAORIの声の重なりを堪能できる「I swear」は、後半には哭きのギターや教会音楽を感じさせる豊かなメロディの楽曲。ライブの醍醐味のひとつは歌手それぞれの持ち味が出ることだと梶浦は言う。この曲は音源とは異なる歌手が歌う楽曲のため、梶浦自身も毎回それを堪能しているとのこと。
●ふたたびイーリアン・パイプスが登場し、「花子とアン」の楽曲のコーナーへ
「MotherLand Nostalgia」はタイトルの通りノスタルジックにビブラートを効かせ、「曲がり角の先に」、「にぎやかな日々」、「今を生きる」ではフルートとバイオリンが爽やかなメロディを奏で、リズム豊かなサウンドとともに陽気な空気を漂わせる。MCでの「こんな曲も書けるんですよ?」の声には笑いが起きるほどだ。「We're Gonna Groove」はアコーディオンとアコースティックギターの協奏が耳を豊かにし、さらにドラムとパーカッションが抜群の集中力でスピード感を作るライブならではの緊張感と楽しさを感じさせる。「hit it and run」は怪しいエレキギターが響き、テンポアップしてからはドラマティックなストリングスが楽曲を引っ張り、パワフルなドラミング+パーカッションがスイングする。さらにフルート、バイオリンにもそれぞれソロの見せ場があり、続いてギターとパーカッションがバトルする。それらを包むメロディの構成美とキレのサウンドに大喝采。「the beginning of the end」では伊東えりが登場し、フルートとストリングスをバックに神秘的なソプラノを響かせる。ドラマティックに演出するドラミングやシンバルのヒットも聴きどころだ。「My dear feather」では歌声の美しさはそのままに、ウェットなリズムとの融合を果たし世界観を作る一曲となった。本編ラストは「a song of storm and fire」の名の通り嵐のような勢いの楽曲が展開された。ストリングスの情熱的な音色に5人のボーカル、アグレッシブなドラムが渾然となり、スピード感はありつつもじっくりと聴かせる構成で伽藍の中にいるかのようなトリップ感を覚えるほどだった。
●アンコールを迎えて「寂しいったらありゃしない」
アンコールを求める大きな拍手に導かれて登場したメンバー。「ソードアート・オンライン」のメインテーマを分厚いストリングスサウンドと勇ましいサウンドで表現し、そこでさらに力強いドラミングと5人分のコーラスが壮大な世界観を演出する。MCでは「アンコールに入ると文化祭の後夜祭3日目みたいにいろんなものが終わりに近づいて、寂しいったらありゃしない」と笑わせた後、来年3月に予定されている次回公演の告知をしてファンを喜ばせる。そしてここからはラストスパート。「red rose」では観客も総立ちとなり拍手でステージサイドを迎える。伊東が艶やかに舞い、イーリアン・パイプスとアコーディオンが異国的なサウンドを響かせ、パーカッションがリズミカル打ち、それにバイオリンが綺羅びやかにメロディを重ねる。それぞれのソロの聴かせどころも十分に用意され、会場全体が音の海を楽しんでいるお祭り騒ぎな時間であるかのようだ。「Vanari stringas」はその勢いのままにさらにスピードを上げ、昂揚した面持ちでそれぞれ協奏して盛り上げる。そんなテンションをちょっと落ち着かせるような「in this winter 」のアコーディオン演奏から 「the image theme of Xenosaga II」へ。イーリアン・パイプスのゆったりとしたサウンドから入り、4人の厚いコーラスが熱を帯びパワフルに楽器が動き出し大きなうねりを巻き起こし、喝采を浴びた。最後のMCで梶浦は「Yuki Kajiura LIVEは特別なことはないけど、素敵なプレイヤーさんに来ていただいて良い環境で私の曲を演奏するのがコンセプト。変わらないことを守りぬくことを大事にしたいなと思っています。またどこかでたったひとりのあなたとして遊びに来てくれたら嬉しいです」と語った。オーラスは「ring your song」。ステージに4人、段上には3人のゲストボーカルが登るという圧巻の体制の中、伊東のソプラノが美しく響きそれにベースが応える。7人のボーカルが声を重ね、穏やかなフルートとともに多幸感溢れる穏やかなこの楽曲でこの日の公演を締めくくり、最後に一列に並んだ20名は観衆から惜しみない拍手を浴び満足した面持ちでステージを後にした。
<セットリスト>
M-01 トラブルメーカー
M-02 overture~ My Story
M-03 Historia:opening theme
M-04 satoyama main theme
M-05 lotus
M-06 let the stars fall down
M-07 Decretum
M-08 Symposium magarum
M-09 黄昏の海
M-10 花守の丘
M-11 水の証
M-12 光の行方
M-13 Rainbow~Main Theme~
M-14 moon and shadow
M-15 everytime you kissed me
M-16 I swear
M-17 MotherLand Nostalgia
M-18 曲がり角の先に
M-19 にぎやかな日々
M-20 今を生きる
M-21 We're Gonna Groove
M-22 hit it and run
M-23 the beginning of the end
M-24 My dear feather
M-25 a song of storm and fire
アンコール
EC-01 overture ~ swordland
EC-02 red rose
EC-03 Vanari stringas
EC-04 in this winter ~ the image theme of Xenosaga II
EC-05 ring your song
<出演>
梶浦由記
Vocal:KAORI、KEIKO、 WAKANA、YUIRKO KAIDA
Vocal:伊東えり、戸丸華江、Remi、
Guitar:是永巧一
Drums:佐藤強一
Bass:高橋“Jr”知治
-今野均strings-
Violin:今野均 藤堂昌彦
Viola:生野正樹
Cello:西方正輝
Flute:赤木りえ
Accordion:佐藤芳明
Percussion:中島オバヲ
Uileann Pipes:中原直生
Manipurator:大平佳男
提供元:listenmusic