デビュー30周年を記念して日本武道館で開催された“Kaji Fes.2023”のライブ映像作品がリリース!これまでの活動を総括した豪華な二日間を、梶浦由記が振り返る。
梶浦由記という作曲家の、音楽を愛し、音楽を愛する人に愛されてきた足跡。昨年12月に開催された『Kaji Fes. 2023』はそのように称されるだろう。その二日間を収めたLive Blu-rayが5月29日に発売された(特典グッズ付き完全生産限定盤は追加受注受付中)。AimerやKOKIAといったゲストアーティストを多数迎え、デビュー30周年記念にふさわしい2夜について、あらためて梶浦由記に振り返ってもらうこととする。彼女にとってどのような時間であったのだろうか。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司
展覧会のようなDAY1、加速していく流れが素晴らしかったDAY2
――『Kaji Fes. 2023』(以下、Kaji Fes.)についてぜひ振り返ってみての想いをお聞きしたいと思うのですが、まずはセットリストの選曲についてからお伺いできますか?
梶浦由記 Kaji Fes.のコンセプトは、みんなが聴きたいであろう曲を上から順にやる、というところで私もプロデューサーの森(康哲)さんも共通してはいます。なので、セットリストはそれほど悩みませんでした。勿論、上から順に、というのはこちらの主観ですけど。これがいつものYuki Kajiura LIVE(以下、YK LIVE)なら、お客さんを驚かせたい意外な選曲、とか、こちらが演奏したい曲を優先して選ぶ、などという部分もありますけど。
――現在開催中の『Yuki Kajiura LIVE vol.#20』でも、劇伴を手がけているTBS系日曜劇場『アンチヒーロー』の曲「Main Theme」を披露されています。
梶浦 やはり私の本業はあくまでも曲を作ることなので。ライブとライブの間に作った新曲を披露する、ということだけは必ず続けたいと思っているんです。たとえ一曲でも。応援して下さる皆様への、こんな曲をまた作りましたよ、という報告と言うか。それが一番のファンサービスだとも思っているんです。難しいのは、サウンドトラックとなると全ての曲がライブ向きとは限りませんから。演奏できる曲には限りがあるといったところでしょうか。
――劇伴作家である以上、なかなかライブで新曲発表ということが難しいですね。
梶浦 でもKaji Fes.の選曲には意外性は必要なく、なるべくみんなが聴きたい曲を全部やるというものなので。これまでのYK LIVEの蓄積で人気曲というのはある程度ありますし、ゲストさんが来て下さるならそこで曲も決まります。いつも通り森さんに選曲していただき、私が「これだけはやりたい」という曲を足していく、という流れでした。だから、いつものライブよりも早く決まったかもしれないです。むしろ、上がった曲からどれを削るのか、がセットリスト会議の一番大変だったところでした。
――梶浦さんがぜひ入れたいと推した曲というのは?
梶浦 なんだったかな? 色々あったんですが忘れてしまいました(笑)。ただ、ゲストさんが多くいらっしゃった分、非日本語の曲が減ってしまったことは心残りでした。YK LIVEは元々、日本語封印ライブから始まっているので、私としては非日本語曲をあと1時間分くらいは増やしたかったんですけど(笑)、削りに削っても、もう二日で7時間分ほどのセットリストになっていたので、それは無理な話でした。選曲会議は楽しかったですが、「これもできないのか」「あれもできないのか」と悲嘆に暮れてもいました。
――現在ツアー中で日本語封印ライブである『Yuki Kajiura LIVE vol.#20』にはその想いが……。
梶浦 結構入っています(笑)。
――Kaji Fes.は、全体を通してのリハーサル時間が取れなかったとお聞きしました。
梶浦 そうなんですよね。(11/4~18に開催された『Yuki Kajiura LIVE vol.#18』の)アジアツアーからKaji Fes.まで3週間もなかったので。『Yuki Kajiura LIVE vol.#18』ツアーそのものは、ファンクラブ限定のイベントでアルバム『PARADE』をかなり歌い込んでからの流れでしたから、感覚はすごく良かったんです。リハからの仕上がりが早かったですし、楽しんでやる余裕もあり、アジアまで行っていつもよりメンバーと長く一緒にいられたのもあり、ツアーの終わりには「次はKaji Fes.だ。頑張ろうね」みたいに和気藹々としていたんです。ところが、Kaji Fes.のリハが始まったら思ったよりも大変なことに気付き始めて。もっと早く気づけって感じなんですけれど(笑)。曲をやってもやってもリハが終わらない。基本的にKaji Fes.はYK LIVEのベスト版なので、あのときは初披露曲は2曲(「櫂」「夕闇のうた」)だけだったんです。それでも、残りの曲をぱっとさらうだけでも時間がギリギリでした。問題は並びですよね。さすがに二日間で7時間分ある曲の並びを全て頭に叩き込む余裕はなく、「次の曲はなんだっけ」状態を残して手元のセットリストをちら見しながら本番に挑まざるを得なかった。そんな色々で、相当錯綜していて、緊張感のある始まりではありましたね。
――ライブの流れとしては、梶浦由記の足跡をたどるような年代順を感じさせました。
梶浦 そうですね、「NOIR」から始めて「PARADE」で終わる、というのは決めていました。でも、それ以外は森さんすごく頭をひねってくださった部分ですね。特にDAY2の流れは、ライブ感があって演奏していてもとても楽しかった。体感的にはライブ2本分の気の抜けない4時間でしたけれど、普段だったらここでライブが終わるかな、というタイミングでFictionJunction YUUKAのメドレーを放り込んで来たり。みんなが疲れてきたかな、というところで加速を始める、演奏側も無理やりアゲられるあの感じ(笑)。あれはすごく良かったですね。二日間を並べたとき、DAY1はお披露目コンサート的に、展覧会のように一つひとつ作品を並べていく感覚でとても落ち着いて楽しく演奏出来たんです。DAY2の方は、二日目でこちらも一日目の疲れが残っていた筈なんですけれど。頭からテンション高めで、気づいたらセットリストの加速に巻き込まれてこちらも振り落とされないように必死で(笑)。疲れたと感じる間もなく4時間が終わってしまった。ライブらしいライブでしたね。
森 やっぱり緩急は必要なので。3時間、4時間を飽きさせないというところもありますし、次の曲が始まったときにやっぱりワクワクしないといけないので。そこがすごく難しいんですけど。なので、作品ごと、年代ごと、というところは意識しながらも曲の繋がりや流れを優先しました。
梶浦 DAY1では、ご縁深く歌っていただいた曲も多いAimerさんはゲストさんコーナーではありますが時間を長くいただいたり、そうすると自然ゲストさん世界の色も濃いライブになりますしね。それもあってDAY1は少し落ち着いた雰囲気になっていましたね。
――Blu-rayには収録されませんが、Sound Horizon / Linked HorizonのRevoさんと共作した「砂塵の彼方へ…」も本編ラストという大きな枠を用意していました。
梶浦 そこはちゃんと時間を取らないと! RevoさんにはMCにもご参加いただく予定でしたので、そこは覚悟が必要でした(笑)。
――そこは意識しておかないといけない部分ですか?(笑)。
梶浦 勿論です! Revoさんに「MCは短めで」なんて失礼なことを言うくらいならお呼びしないです。でも逆にとても私たちに気を遣って下さって。どこまで行って下さるのか期待と不安が半分半分だったんですけど(笑)、締めにふさわしい暖かいMCをいただきました。収録出来なかったのは残念ですけれど。
――落ち着いたDAY1を踏まえて、DAY2は前日終盤の「My Story」からのつなぎを感じさせるインストゥルメンタル曲を経て、序盤から『魔法少女まどか☆マギカ』曲で盛り上げました。
梶浦 DAY2冒頭の、インストから「Magia」に進み、Kalafina曲に入るセクションは演奏していても否応なしに気持ちが上がってしまう流れなんですよ。リハーサルの時、時間が足りずDAY2の全曲通しはできず、ブロックごとの通しだけだったんです。そのときから「頭からこんなに上がって4時間大丈夫かな」とは思っていました。かといって抑える訳にもいかず、出ずっぱりのバンドさんや弦の皆様には本当に大変な思いをさせた、特にDAY2だったと思います。皆さん流石で、何の問題もなく全編見事な演奏をして下さいましたけれど!
――DAY1、DAY2と共通して、ライブスタートはアコーディオンの佐藤芳明さんが一人で担いました。アンフィシアターでのYuki Kajiura LIVE vol.#15を思い起こさせる演出は印象深かったですが、どのような意図が込められていたのでしょうか?
梶浦 大きな会場ですと客席がすごく遠いので、客席から登場してもらうことで自分の部屋で奏でられてかのように、音を一瞬身近に感じてもらうことはすごく効果的だと思っています。vol.#15のときの佐藤さんもとっても素敵でしたし、本当は今回も客席から登場してほしかったんですよね。でも残念ながら武道館では禁止されているので。あと、佐藤さんはアコーディオンが素晴らしいのも勿論ですが、ああいった俳優さんのような……場を作る立ち回りもとってもお上手ですよね。衣装の選び方ひとつにしても。
――道化師的立ち回りが見事でした。
梶浦 とても心得ていらっしゃいますし、すごくかっこいいですよね。SNSを拝見していても、「え! 今日も!?」と思うくらいライブの数をこなされている方なので、ライブ会場でのお客様との付き合いに関しても大先輩です。だから、そういう方に個としてのパフォーマンスを最初にみせていただくと、ステージと客席を近づけていただけますし、何よりも、私がMCで「楽器も主役のライブなんです」と話すよりも先にあの登場シーンがあったことで、その説明の説得力がぐっと増したと思うんです。そういった意味でもすごく大きな役割を果たしてくださったと思っています。
――YK LIVEが見せる、数少ない演出であり、外連味だった気がします。
梶浦 そうなんですよね。YK LIVEって3時間やろうが4時間やろうが映像も含め「演出」と呼ばれるものはほぼやらない、ある意味不親切なライブでもあるので。今回は会場が広いということでスクリーンに(カメラで寄った)サービス映像は映しましたけど、それが私たちにとってもとても新鮮でした。ただ基本的にはBGMが中心のライブではあるので、何らかのストーリー性を感じてもらえた方が楽しんでいただけるとは思っています。いつもはその役割を、音に合わせとても美しく作っていただいている照明が果たしてくれていると思っているんですが、今回はイントロにちょっとした演出を設ければより物語性を感じていただきやすくなるかな、ということもありました。Kaji Fes.に驚きは必要ないと思ってはいますけど、まあ冒頭くらいは少しだけいつもと違うことを、と。
――特別感ですね。
梶浦 通常のツアーはいつもそのツアーに合わせて作る、まあ大抵これでライブが始まるの!? という不穏な音ですけれど……overtureが流れて始まるんですよ。でも、「いつものあの感じ」ではなく佐藤さんの登場とアコーディオンの生の音から始まったことで、特別感を感じてはいただけたんじゃないかと思います。佐藤さんが一人で登場し、次は弦と(YURIKO )KAIDAさんだけが加わって一曲。それからやっと「いつものあの感じ」でみんなが登場しますから。思わせぶりなイントロダクションで少しドキドキしていただいて、そのあとのovertureで「ついに始まった!」と思っていただけたらと。
――また、Kaji Fes.が見ていて面白かったのは、バックスタンド席としてステージの背面側にも客席が用意されていたところです。ステージとの距離が非常に近く見えて。あの雰囲気は梶浦さんも当日までわからないところだったかと思いますが?
梶浦 そうですね。バックステージにもお客様がいることは無論知っていましたし、だいたいこんな距離感、と図面では見せて貰ってもいましたが、まさかあそこまで近いとは(笑)。今回のBlu-rayにも、バックステージの特に前列の方々は個人が特定できるレベルで映っていますから、「大丈夫かな」という気持ちはちょっとあります(笑)。
――でも素敵な記念になると思います。
梶浦 そう思っていただけたなら嬉しいです。
――演者としては演奏しながらいつもと違う感覚はありましたか?
梶浦 でも、私や楽器隊は動けませんから。どんなに近くてもたまに手を振るくらいしか出来なかったんですが、歌い手さんたちは難しいんじゃないかと思っていました。前ばかり向いていても良くないけれども、みんなが一緒にうしろへ行っても変なので。どうパフォーマンスを振り分けるか、そこは任せるしかありませんでした。でも、ゲストさんも含めて、歌い手さんたちは私なんかよりも大きな会場に慣れている方ばかりなので、そこはさすがでしたね。
音楽をやっていて良かったと思える二日間
――二日間のステージの中で印象深かった瞬間というと?
梶浦 覚えている瞬間はたくさんありますけど、一番印象的だったのはDAY2の最後ですね。
――「Parade」の演奏後ですか?
梶浦 はい。いつも、私が出演者のラインナップを言ったあと、KEIKOちゃんとKAORIちゃんが「そして! 梶浦由記ー!」と言ってくれるんですけど、DAY2のそのタイミングで、自分の記憶の中では頭上からキラキラしたものが降っているような映像が残っているんですよ。でも、実際にはそんなものは降らせていないんですよね。YK LIVEはそういうところに予算を使うくらいなら一人でもミュージシャンを増やす、がコンセプトなので、歌姫の着替えさえなく(笑)。でも、あの瞬間、金や銀の粉が舞っていたような不思議な感覚があるんです。あの二日間は、500人の会場から始まったライブがまさかの武道館までたどり着けた日でもありましたし、ずっとYK LIVEを見てくださった方、梶浦由記の音楽を聴いてくださった方にとって、それが実現できたのは自分たちの力でもある、と思ってくれた夜でもあったはずです。間違いなく今までで一番大きな箱ですし、あくまで私はBGM作曲家であって、万人受けするような曲を作っていないことはみんなが分かっているので。実際、ステージに出たときから歓声も拍手もすごく長くて、温かくて、想いの熱さを感じる、そんな二日間でした。決してネガティブな意味ではなく、ここが人生で最も華やかな瞬間なんじゃないかな、と明確に思えたんですよね。きっとこれからも音楽の喜びみたいなものはいくらでも手に入れられる確信はありますけど、きっと次に目指すのは華やか、という所ではないだろうと。何と言うのでしょう……そもそも私はこういう華やかさを、きっと自分では目指しては来なかった。自分が辿り着こうと思ってたどり着いた場所ではなかったんです。だからあそこは、間違いなく、スタッフや協力してくれたミュージシャンのみんな、そして何より今まで応援してくれた、あの場で暖かい声援を送ってくださった一人一人の方に、三十周年のサプライズのように思いもかけずプレゼントして貰った、自分では絶対に辿り着けなかった、華やかな場所だったんです。
音楽を30年続けてきた素直な思いをぶつけた「Parade」という曲を、出会えて本当に幸せだと思える、素晴らしい歌い手さん4人と一緒にレコーディング出来た。だからKaji Fes.の最後はバンドと、4人と、あの曲を演奏しようと決めていました。そんな曲が終わり、今までで一番多くの方に温かい拍手を送ってもらえる、そんな瞬間を30年の末の12月に味わえるなんて、こんな幸せな人生はなかなかないと本当に思っていました。あのキラキラは、そういったいろいろな思いの全ての現れだったのかな、と思ってはいます。私はあまり昔を振り返る方じゃないんですが、ただ、「この瞬間はちゃんと覚えておかないといけない」とすごく感じていました。すごく忘れっぽいので(笑)。今も思い返すだけで幸せになれますね。今までやってきた音楽がちゃんと届いていたよ、という証でもあるのかなと思っています。誇らしい、宝石のような瞬間でしたね。
――「Parade」を演奏する前にも、歌姫4人に対する絶賛の言葉を述べられていました。Kaji Fes.まででもYK LIVEだけで15年、#19に至る年月を共にされてきました。その中で歌姫4人は何が1番変わったという感覚がありますか?
梶浦 年を取ったんじゃないでしょうか(笑)。
――(笑)。
梶浦 本当に(笑)。年齢を経るってすごいことなんですよ。当たり前ですけど経験と時間をかけなければ積み上げられないものってあって、若くなければできないこともあれば、経験を積まねばできないこともある。私は後者の方が圧倒的に多いと思っているんです。特に彼女たちくらいの年齢ならば。歳をとったら必ず何かを得られるわけではないけれど、彼女たちは努力を怠らず積み上げてゆく人たちなので、心から尊敬しています。
私、こと彼女たちに関しては歌はかなりおまかせなんですよ……。レコーディングでは作品との兼ね合いで、どう歌ってほしいか伝えることもありますけど、でもそれも、ライブで歌っているうちに結構変わっていくんですよね。正直、「え? こうなっちゃう? 」と思ったことも過去にはありますけれど、それは歌って変わってくるものなので。今そう歌いたい理由がその人にはあるはずですしね。え、結構言われていますが……と彼女たちに言われてしまったらどうしよう(笑)。ただ、長年色々考えながら聴いてきたんですけれど、最近の彼女たちは歌がすごく素直になってきたというか、歌に対して欲はあってもその在り方が変わってきた感覚はありました。私、ポール・マッカートニーの歌がとても好きなんですけれど、あの人は作曲家だからかもしれませんけど、歌をみせびらかすような真似はしないけれどメロディーが求めるままに素直に、綺麗に歌うんですよ。誤解されたくないんですが、フェイクやビブラートや歌い崩しが嫌でそのまま歌え! と言いたい訳ではなく、何と言うんでしょう、最近の彼女たちは歌が求めているものを探り出すことがとても上手いというか、自分の歌に自信があるから見せびらかす必要もなく、自分の見せ場もちゃんと心得た上で、歌い手である自分の「歌」を聞かせることに本当に卓越した歌い手さんであるなあ、とほれぼれするんです。Yuki Kajiura Liveにかかせないハーモニーの部分でも、楽屋で何気なくハモっているのを聴いても笑ってしまうほど完成度が高い。その歌の完成度に自分たちでも自信を持っているから、また歌が輝くんでしょうね。
これからも彼女たちの歌は変わっていくんでしょうね。むしろ変わって行かない方を選ぶのかもしれないし、それはどちらでもいいんです。単純に私は、あの人たちが今やろうとしていることとこれからやろうとして行くことを、聴きながら楽しませてもらうつもりです。
――それは、あの4人の歌姫とは離れないだろうという確信を持っている、ということですか?
梶浦 それはどうですかね。私はこの先もずっと一緒に音楽をやらせてほしいと思っていますが、それは私だけが選ぶことじゃない。彼女たちにも、それぞれの歌も、人生もありますから、いつまで付き合って貰えるかは分かりません。私だって彼女たちに選んでもらわないといけませんから。今年のツアーで最後になるということだってあるかもしれない。だからこそレコーディングの一回一回を、ツアーの一本一本を、大切にしていこうと思っています。
――これからも作曲活動が続く以上、新曲が増え、新たな歌い手も増えていくかもしれません。今後のYK LIVEについてはどのようにしたいという想いがありますか?
梶浦 一番は続けることですね、やはり。ライブが難しい時期もありましたから。
――コロナ禍で。
梶浦 少し前までは、あまりに忙しいなら1、2年休んでもいいかという気持ちもありました、でも逆に1、2年休まなければいけない状況に陥ると、そうなった時、またもう一度始める、ということの困難さに改めて気づいた。あの時期、みんながそうだったでしょうけれど、当たり前だと思っていたけれど当たり前ではなかったことのありがたさに沢山気づいた。3回くらい頭をぶん殴られた感じでした。YK LIVEはまだやりきった感じは全然ないし、続けたいのであれば、多少無理をしてでも続けなければいけないんだと強く思いました。
――YK LIVEでやってみたいことはありますか?
梶浦 いくつもありますよ。ただ、今スタッフも含めてとてもいいメンバーにたどり着けた実感はありますから。この体制をいつまで続けられるかわからないので、今のメンバーでできる間はこのままで、とも思っているんです。それぞれに仕事があり、来年には違うことをやりたいと思われる可能性だってありますよね。私だってずっと元気でいられるとも限らないし(笑)。だから、このままで、と思う反面、大人数のクワイア編成とか弦中心とか、そういう一発ライブをいつかやってみたいなとも思っています。弦中心になったとしてもバンドを外すという選択肢はないですけどね。ストリングス+バンドコンサート+クワイアとか。作品別ではなく、全作品からクライマックスのコーラス曲ばかりを選んで、誰かが殺される曲ばかり2時間演奏するとか(笑)。そういったイレギュラーなライブでやりたいことはたくさんあります。でも、その根底にいつも今のメンバーの「レギュラーコンサート」を置いておきたいという欲は一番強いですけれど。
――あらためて、梶浦さんにとって『Kaji Fes. 2023』について感じるところを教えてください。
梶浦 音楽をやっていて良かった、に尽きますね。自分が今やっていることは、まだまだすべて道半ばだとは思っているんですけど、その中でKaji Fes.は確かに一つのゴールだったとは感じています。やっぱり武道館でやるなんてこれが最初で最後だと思いますし。だからこそ、次はもっと楽しいところに行こう、とは思っていますけど。
――武道館に立たれたアーティストで、最初で最後かもしれない、と仰る方はいますね。
梶浦 私の世代は特に、だと思いますけど、やはりみんなが目指した場所ではあるんですよね。その意味でもゴールのような場所ですし、あとは何よりも、周りの方に喜んでいただけるという所も正直大きかった。今や、もっとキャパの大きな会場も幾らでもありますけど、武道館が決まったと話すとみんなが格別に喜んでくれる所があるので、そういった意味でも「お祭り」にはとても相応しい場所でした。でもまさか、そう言っていて約2ヶ月後にまた立つことになるとは思ってませんでしたけど(笑)。
――年が明けてから『リスアニ!LIVE 2024』で、しかもLiSAさんをボーカルに迎えて。
梶浦 あれはもう本当にスペシャルな体験でしたね。LiSAさんと同じステージに立ち、最初に作らせていただいた曲(FictionJunction feat. LiSA名義の「from the edge」)を一緒に演奏できたことは、ただ心から、嬉しかったです。時間があっという間に過ぎてしまい、体感30秒くらいで終わってしまいました。
――その意味では、また武道館での宴が実現するかもしれません。
梶浦 人生何が起きるかわかりませんしね!
――その日が来るまでの間、今回のLive Blu-rayを楽しんで待ってもらう、というところですね。
梶浦 私にとっては本当に幸せだった二日間なので。何度でも、ご覧いただけたら嬉しいです。
――きっと皆さんにとっても幸せだった二日間だったと思います。
梶浦 そう思いたいですね。
●リリース情報
梶浦由記 / FictionJunction
LIVE Blu-ray
「30th Anniversary Yuki Kajiura LIVE vol.#19 ~Kaji Fes.2023~」
発売中
購入はコチラ
https://kajiurayuki.lnk.to/KajiFes.2023
出演
梶浦由記 / FictionJunction
<ボーカル>
KAORI、KEIKO、YURIKO KAIDA、Joelle、rito、LINO LEIA
<ミュージシャン>
是永巧一(Guitar)、佐藤強一(Drums)、高橋”Jr.”知治(Bass)、中島オバヲ(Percussion)、赤木りえ(Flute)、佐藤芳明(Accordion)、中原直生(Uilleann Pipes)、
今野Strings:今野均(Violin)、藤堂昌彦(Violin)、小林知弘(Viola)、奥泉貴圭(Cello)
大平佳男(Manipulator)
<Day1:ゲストアーティスト>
Aimer、笠原由里、Remi
※Revo(Sound Horizon/Linked Horizon)は映像収録されません
<Day2:ゲストアーティスト>
ASCA、伊東えり、KOKIA、JUNNA、戸丸華江、Hikaru、結城アイラ(ASUKA)
「30th Anniversary Yuki Kajiura LIVE vol.#19 ~Kaji Fes.2023~」
【完全生産限定BOX盤】
価格:¥20,000+税
Blu-ray×2枚 [Day1&Day2]/ラミパスレプリカ/Tシャツ[限定カラー]/48pライブフォト+インタビューブック
予約はコチラ
https://kajiurayuki.lnk.to/KajiFes.2023
「30th Anniversary Yuki Kajiura LIVE vol.#19 ~Kaji Fes.2023~」Day 1
【通常盤】
価格:¥8,000+税
Blu-ray×1枚
「30th Anniversary Yuki Kajiura LIVE vol.#19 ~Kaji Fes.2023~」Day 2
【通常盤】
価格:¥8,000+税
Blu-ray×1枚
購入はコチラ
https://kajiurayuki.lnk.to/KajiFes.2023
「30th Anniversary Yuki Kajiura LIVE vol.#19 ~Kaji Fes.2023~」[Day 1]
<収録曲>
fake garden (TVアニメ「NOIR」)
canta per me (TVアニメ「NOIR」)
the world (TVアニメ「.hack//SIGN」)
liminality (OVA「.hack//Liminality」)
in the land of twilight, under the moon (TVアニメ「.hack//SIGN」)
swordland (TVアニメ「ソードアート・オンライン」)
she has to overcome her fear (TVアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」)
luminous sword (TVアニメ「ソードアート・オンライン」)
星屑 (FictionJunction アルバム『Everlasting Songs』)
花守の丘 (OVA 「真救世主伝説 北斗の拳ZERO トキ伝」 主題歌)
we’re gonna groove (TVアニメ「MADLAX」)
Obsession (TVアニメ「.hack//SIGN」 OPテーマ)
千夜一夜 (OVA『.hack//Liminality Vol.2』OPテーマ)
Point Zero (TVアニメ「Fate/Zero」)
salva nos (TVアニメ「NOIR」)
花の唄 (劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅰ.presage flower 主題歌)
I beg you (劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅱ.lostbutterfly 主題歌)
櫂 (FictionJunction アルバム『PARADE』)
朝が来る (TVアニメ”「鬼滅の刃」遊郭編” EDテーマ)
My Story (NHK連続テレビ小説「花子とアン」)
Parallel Hearts (TVアニメ「Pandora Hearts」OPテーマ)
stone cold (TVアニメ「セイクリッドセブン」OPテーマ)
the image theme of Xenosaga II (ゼノサーガ エピソードII [善悪の彼岸])
蒼穹のファンファーレ (アニメ「ソードアート・オンライン」10周年記念テーマソング)
「30th Anniversary Yuki Kajiura LIVE vol.#19 ~Kaji Fes.2023~」[Day 2]
<収録曲>
street corner (TVアニメ「MADLAX」)
希望の光 (NHK連続テレビ小説「花子とアン」)
prelude to Act 1 (TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」)
Numquam vincar (TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」)
Magia [quattro] (劇場版「 魔法少女まどか☆マギカ」 [前編] 始まりの物語」EDテーマ)
storia (NHK「歴史秘話ヒストリア」OPテーマ)
君の銀の庭 (劇場版「魔法少女まどか☆マギカ」[新編]叛逆の物語」主題歌)
to the beginning (TVアニメ「Fate/Zero」 2ndシーズン OPテーマ)
海と真珠 (TVアニメ「海賊王女」OPテーマ)
太陽の航路 (TVアニメ「海賊王女」最終話EDテーマ)
time to sail! (TVアニメ「海賊王女」)
The main theme of “L.O.R.D: Legend of Ravaging Dynasties” (映画「L.O.R.D: Legend of Ravaging Dynasties ~爵跡 無道王朝伝説 爵跡」)
I talk to the rain (TVアニメ「ツバサ・クロニクル」)
a song of storm and fire (TVアニメ「ツバサ・クロニクル」)
ring your song (TVアニメ「ツバサ・クロニクル」)
ことのほかやわらかい(FictionJunction アルバム『PARADE』)
夜光塗料 (FictionJunction アルバム『PARADE』)
雲雀 (TVアニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼列車 Grace note-」 EDテーマ)
君が見た夢の物語 (TVアニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼列車 Grace note-」特別編 主題歌)
everlasting song (TVアニメ「エレメンタル ジェレイド」挿入歌)
世界の果て (FictionJunction アルバム『PARADE』)
優しい夜明け (TVアニメ「.hack//SIGN」 EDテーマ)
君がいた物語 (ゲーム「.hack//Liminality vol.3」OPテーマ)
Rainbow~Main Theme~(映画「RAINBOW」テーマ曲)
風よ、吹け (映画「風よ あらしよ 劇場版」EDテーマ)
lotus (アルバム『FICTION II』)
inverse operation (TVアニメ「ヴァニタスの手記」)
目覚め (TVアニメ「舞-HiME」)
夕闇のうた (TVアニメ「戦国妖狐 世直し姉弟編」EDテーマ)
荒野流転 (アニメ「幕末機関説 いろはにほへと」OPテーマ)
Silly-Go-Round (TVアニメ「.hack//Roots」OPテーマ)
cazador del amor (TVアニメ「エル・カザド」挿入歌)
nowhere (TVアニメ「MADLAX」挿入歌)
zodiacal sign (TVアニメ「アクエリアンエイジ Sign for Evolution」)
into the world (NHK「歴史秘話ヒストリア」EDテーマ)
red rose (アルバム『FICTION』)
Parade (FictionJunction アルバム『PARADE』)
●ライブ情報
Yuki Kajiura LIVE vol.#20~日本語封印20th special~
2024年6月 2日(日)昭和女子大学 人見記念講堂
Open:16:45 Start:17:30
2024年6月 9日(日)神奈川県民ホール
Open:16:45 Start:17:30
2024年6月23日(日)LINE CUBE SHIBUYA
Open:16:15 Start:17:00
2024年6月29日(土)NHK大阪ホール
Open:17:15 Start:18:00
2024年6月30日(日)NHK大阪ホール
Open:15:15 Start:16:00
2024年7月 6日(土)名古屋・Niterra特殊陶業市民会館ビレッジホール
Open:17:15 Start:18:00
2024年8月3日(土)大宮ソニックシティ 大ホール
Open:17:15 Start:18:00
【出演】
梶浦由記(Piano/Chorus)
Vocal:KAORI・KEIKO・YURIKO KAIDA・Joelle・rito・LINO LEIA
Guest Vocal:伊東えり
MUSICAN:FRONT BAND MENMERS
是永巧一 (Guitar)、佐藤強一 (Drums)、高橋“Jr.”知治 (Bass)、今野 均 (Violin)
赤木りえ(Flute)、中島オバヲ (Percussion)、大平佳男 (Manipulator))
●書籍情報
『6,000曲の“パレード” 作曲家・梶浦由記 異才の流儀』
著者:君塚匠+NHK取材班
出版社:NHK出版
発売日:2024年7月25日
定価:2,090円(税込)
判型:四六判並製
ページ数:224ページ
Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4140819707
NHK出版ECサイト:
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000819702024.html
関連リンク
梶浦由記オフィシャルサイト
https://fictionjunction.com/