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Kalafinaロングインタビュー 「全てが音楽でつながっているエンターテイメントを作りたい」
SPICER
インタビュー音楽アニメ/ゲーム
18:00
Kalafina 左からHikaru Keiko Wakana 撮影=菊池貴裕
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今本当に凄い音楽を奏でているのは誰だろうか?様々な素晴らしいアーティストがいるが、その中に間違いなく入ってくるのがKalafinaだろう。5月には中国の国事的一大イベント『上海之春国際音楽祭』の一環として『Kalafina LIVE 2016 “far on the water” in Shanghai』を成功させた彼女たち、アニメソングという枠ではもう測れないその圧倒的な歌声に迫りたく、インタビューを敢行した。9月に神戸、東京で控えるアリーナツアーに向けて彼女たちが思うことは?
——SPICEでは初登場ということで、改めてKalafinaの事を聞かせて頂ければ、活動開始から8年経ちましたが、取り巻く環境も変わってきましたか?
Wakana: 私たちは劇場版アニメ『空の境界』という作品の主題歌プロジェクトとしてスタートしたこともあって、最初はライブをする予定はなかったんです。ところが2年目の1st AlbumとTVアニメ「黒執事」の主題歌のSingle「Lacrimosa」を同時リリースする所から環境がガラリと変わって。レコーディングだけではなく、ライブも始めたんです。それからライブハウスからホールへと徐々に規模が増えていき、更に海外でのライブも増えました。とてもありがたいなと思いますね。
――先日も上海がありました、改めて大きなイベントの一環ということでしたが。
Keiko: 約6年ぶりだったんですが、私達が海外を視野にいれて活動するきっかけとなったのがその時の『Kalafina LIVE TOUR 2010 in Asia』だったんです。その時初めて行かせて頂いた場所で、すごく印象に残っていたんですね。今回久々に行った時に6年前から見に来てくれたお客さんも来てくれたし、『上海之春国際音楽祭』という歴史あるものに出演させていただいたので、私達を知らない人も凄く多かったんです。
――満員で大成功とお聞きしています。
Keiko: 初めての方に音楽を届ける時に「はじめまして」の気持ちをちゃんと届けようというのは私達3人が常に意識していることなんです。実際にはじめましての人が多い現場で、普段と変わらないスタイルのライブが出来たのは今までの積み重ねが生きている部分があるな、と思うことも多かったですね。ノリが凄く熱いので私達も序盤助けられたり、一緒に楽しめました。
――日本と海外でライブの構成を変えたりしている部分もあるんでしょうか?
Keiko: 今回は日本でいうと「さくらさくら」のような中国で有名な「茉莉花」という民謡を中国語でカバーしてみようというのをやってみたんです、普段は日本と変わらないライブを伝えようというのが私達のスタイルなんですが、今回の上海公演で初めてその国の歌を聞いてもらおうと言う試みだったんです。曲のリアクションなどはイントロからの湧き方とか「海を超えて来てくれた!待ってたよ!」という日本と違う熱量を感じましたけど、どこにいても変わらず歌を届けようと言うポリシーを持っているので、そこはぶれずに意識してやってますね。
Wakana 撮影=菊池貴裕
――前回のライブFINALで感じたのが、音響照明が昔よりパワーアップしている気がして、それはKalafinaの歌が恐ろしく洗練されているものになってきているから、音響照明もそれに負けないように付いていこうとしている気がしたんですね。これはうちの総編集長も同じ意見だったんですけど。
Wakana: そう言って頂けるのは凄く嬉しいですね。
――照明や音響が演者をのせることがあっても、Kalafinaは演者がスタッフを引っ張っている気がするんです。
Keiko: ありがたいですね、本当に。
――踏まえて改めて3人で歌うことについてお伺いできればと思います。3人でハーモニーを取ると言うのは実はとても難しいんじゃないかと思っていて、曲によってメインボーカルもコロコロと変わっていく。恐ろしくテクニカルな事をやってらっしゃると思うんですが、歌を歌うという部分で3人の関係性は年月を重ねることで変わっていったりした部分はあるんでしょうか?
Hikaru: そうですね、8年間一緒に歌ってきて、その中で改めて二人の声を聞いて発見することも多いですし、声を重ねることで初めて気づくことも多いんです。それは今も昔も変わらなくて、年月の中で二人の声を知って、自分もやりたいことが増えていって、欲が出ることが多いんですけどね。
――でも3人とも綺麗に声の特徴が違うじゃないですか、そのバランスが本当に良くなってるなと思うんです。
Hikaru: そこはなんか、最近私は原点に立ち返って考えることが多くて。今私たちは3人でこの一曲を奏でてるんだ、と意識するようになってぐっとKalafinaらしさが出てきたと思えるようになりましたね。
Keiko 撮影=菊池貴裕
――あと僕がとても印象的だったのは、お三方とも本当にステージドリンクを口にすることが少ないことなんです。
Hikaru: 徐々に減った気がします、最初のころはMCのたびに飲んでましたが、ここ数年で減りましたね。
――大丈夫なのかな、と思うくらいなんですが。
Wakana: 私はのどが渇いたら飲むようにしてるんですけど、見え方もあるじゃないですか。MCで二人が喋ってる時は私はそれを聞きたいと思うし、飲むと喉をゴクッと使うのがあまり好きじゃなくて、その後の歌にも影響が出る気がしてて。 衣装の早替えの時とかは勿論飲むんですけどね。Keikoはほとんど飲まないと思うな。
Keiko: 手持ち無沙汰な時に飲んだりしますけど、「超のど乾いた!」とかは3人ともステージが終わってから感じるんですよね。戻ってきてドリンク一気飲みする!みたいな(笑)。全体感を通して、水を飲むというのも計算して入れたいと思うんです。水を飲むことでライブの流れを止めたくない思いは強くて、『Kalafina LIVE TOUR 2015~2016 “far on the water”』なんかは特にそうだったんですけど、呼吸一つがメロディのようになっているくらい緊張感にあふれている空間なので、水を飲むという行為が流れをぷつっと切る気がしてて。どうしてもっていう時は喉が詰まっている時とか、ヤバい時ですね。
――なるほど。
Keiko: それ以外では、Kalafinaのステージは一曲歌ったら終わりでもなくて、1ブロック歌ったら終わりでもなくて。退場するまでが1ステージだと思っているので、その流れを気にしていると水分補給をするイメージが私たちに無いんですね。
――そうですね、別にセリフを言ってるわけでもないのにKalafinaのライブはとても演劇的に見える時があります。演劇では舞台上で水を飲んだりしませんものね。
Keiko: 曲ですかね?曲がとてもストーリー性があるので。
――先日のNHKホールも凄く流れを感じたんですね。その中でダブルアンコールで披露した「アレルヤ」が印象的でした。あそこだけ素の3人というか。あれは本当に突発だったんですか?
Keiko: そうですよ! あそこまで作り上げたものがあって、最後肩の力が抜けて。皆さんがスタンディングオベーションしてくれてる中で違う絵を見えるかもしれないと思って。
Hikaru: なんかいいですよね。みんながわーっとなってくれている中で、やっぱりまだステージに居たいって気持ちは毎回あるんです。それを歌に乗せて伝えられる機会を皆がやらせてくれる環境はありがたいなって。
Keiko: ちょうどバンドさんが入るスタンスのライブではないので、かっちりしてないから出来たよね、いやカッチリはしてるんですけど(笑)。ちょっとフリーで出来るのはアコースティックのあのライブならではですね。
――最後になんか心が暖かくなるというか…感動的でしたね。
Keiko: 良かったぁ……。
Wakana: 嬉しいです、本当に。
Hikaru 撮影=菊池貴裕
次のページではプロデューサー、梶浦由記さんについてや、音楽のルーツ、9月に控えたアリーナツアーについてお聞きしました!
――普段歌のトレーニングはどんなことをされてるんでしょうか? 歌っている時のクールな印象と、ブログなんかで見える可愛らしい雰囲気のギャップも魅力の一つだと思うんですけど、あまり日々のトレーニング的なものは見えない気がしてまして。
Wakana: もうそれぞれなんですけど、私は走ったりするのは得意ではないので、体づくりというより喉のケアを気にしていますね。毎回セットリストを組む時にこの曲の後にコレを歌うなら、自分が一音にどう向き合うかというのは凄く考えます。普段3人でリハーサルをするので、「この曲はこの音をこれくらいの強さで出そうと思うんだけどどうかな?」とかそういう相談もしますし、自分が一人で考えていることより3人でリハーサルすることで変化することが大きいので、同じ曲でもライブごとに変わることは多いですね、歌について考えることは本当に多いです、喉のケアも何が正解かはわからないので、気持ちも前向きじゃなきゃいけないし…でもそれが一番大事なのかなとは思いますね。
――そうですね。
Wakana: いつでも最高のものを見せたいとは思っているので、後悔だけはしたくないですね。最近は毎週末歌わせていただくことも多いし楽しいので、それが半年とか三ヶ月とか続くのは自分たちにとっても良いリズムだと思います。
――先日はNHK『SONGS』にも出演されましたし、谷村新司さんとの共演もありました。スタート地点は『空の境界』だと思うんですけど、新しいフィールドでの挑戦が始まっている気がします。
Keiko: ここ1年半くらいで色々変わってきましたね。それまではカバーもあんまりしないというのがKalafinaのカラーだったんですけど、一方では自分たちの技術を追求しているような部分もあって。梶浦由記さんは私達の声の一番きれいに響く所を考えてハーモニーを創ってくださるんですね、そういう音楽を約八年やってきましたが、最近は他の歌手の方と一緒に歌わせていただいたり、カバーにも挑戦するという機会が増えてきまして、そうなると私達の歌っていた手法だけでは足りないことも出てきたんです。もっと三人の声をユニゾンに寄せないと行けない時もあるし、それぞれの声だけどもっと交わるように歌うとか。個性を出しながら同じパートを歌ったり、そういうものに挑戦する時にワンステップ上の意識の変化が必要だったりすることがあって。また新たな自分たちでも知らなかったものが色んなアーティストさんに見つけていただいた気がしてて。歌い手としては今、とても楽しいですね。
――以前梶浦さんにもインタビューさせていただいたんですけど、インタビュー後に「私今日Kalafinaのライブだからテンション上がっちゃってるのよ!」って凄く楽しそうだったのを思い出しまして。
Hikaru: 言いそう! 梶浦さん言いそうそれ(笑)。
――もう9年近く一緒にやってるのに凄いな! と。
Hikaru: 来るといつもそういう感じで楽しんでいただいてますね。
Keiko: 梶浦さんは普段一人で作曲活動されることが多いみたいで、私達のライブとかで表に出るのを楽しみにされてるみたいですね(笑)。
――皆さんから見て梶浦さんというのはどういう存在ですか?
Hikaru: 師匠……?(笑) 師匠というか先生というか、音楽に対する姿勢が物凄く真面目な方なので、それを見習わないとなといつも思いますね。素晴らしい方にプロデュースしてもらってるなって思うし、音楽を離れると物凄くおちゃめな方だし、そういう姿を見ると「あっ、梶浦さんも一人の人間なんだな」って安心したりしますね(笑)。
撮影=菊池貴裕
――梶浦さんが師匠というお話が出ましたが、みなさまの思い出の曲とか歌うキッカケの曲とかあるんでしょうか?
Wakana: 私は母親が音楽の先生をやっていたこともあって、音楽に触れる機会は多かったんです。よく母が聞いていた中で私が好きだったのはニール・セダカとかだったんです。わかりやすい音楽を好んでいたんですけど、どうせ音楽が好きなら歌える環境に入れてあげようってことで親が合唱団に入れてくれたんです。それで高校の時に洋楽を聞くようになって、それがホイットニー・ヒューストンだったんです。一人の女性として、歌手として感動したのはホイットニーだったんです。そこからクリスティーナ・アギレラとかセリーヌ・ディオンを聞いて、私も本当に歌手になりたい! って思ったんです。
Keiko: 私は尾崎豊さんですね。一番好きなのは「ダンスホール」って曲なんですけど、知った時には尾崎さんはもう亡くなられていたんですけど、音楽に乗せればこんなに思いを伝えることが出来るんだって思ったんですよね、尾崎さんのルーツを追っていく中で、こんなに若いのに凄い歌詞を書いていたんだな、と思って。普通じゃない研ぎ澄まされた感覚を持っている尾崎さんが魅力的だったんですね。でも最初に響いたのは声かなぁ……魂の叫びというか。
Hikaru: 物心付いた時から歌が好きで、本当に小さい時はアニメで流れていた曲をカラオケで歌ったり、J-POPを聞いて育ってきたって感じがしますね。高校生の時に初めてビヨンセのライブDVDを見て、「ああ……世界にはすごい人が居るんだんぁ……」と思って(笑)。 歌うだけではなくて、ライブの凄さというか、演出の魅力を感じたんですね、人の前で歌うということをそこで意識した気がしますね。
――みなさんそれぞれにルーツがありますね。さて、改めて9月にはアリーナツアー『Kalafina Arena LIVE 2016』が控えておりますが。意気込みなどあれば。
Wakana: 武道館2daysを以前やらせて頂いて、またあそこに立たせて頂けるのは本当に幸せだと思いましたし、神戸ワールド記念ホールは実はKalafinaとしては3人で立ったことがないんです。Hikaruが加入する前に一度、私とKeikoは立ったことがあるんですけど
(※)、3人であそこに立てるっていうのは喜びがありますね。あの時は右も左も分からなかったので、二日間も出れるという喜びもあるし、海外の方が来て頂いても楽しめるものになると思います。私達のハーモニーを生で聞いてもらいたいですね。
(※)Revo&梶浦由記Presents Dream Port 2008 神戸公演
――Hikaruさんが立たれてなかったのは意外です。
Hikaru: そうですね、気持ち的にはその時一緒に立ちたかったなぁというのはやっぱりあるので、その思いもぶつけたいですね。
――勿論以前から見させていただいておりますが、もうHikaruさんがいないのは不思議な感じしますもんね、今では。
Keiko: 私達もそうですよ、なんか最初から3人でやってるような気がします(笑)。
――仲いいですよね、本当に。
Wakana: よく言われるんですよ! みなさん仲悪くしたいのかなぁと思うくらい言われるんですけど!(笑)。
――とても女子感強いですよね。
Keiko: 普通なんですけどね……(笑)。
――Kalafina自体がクールな印象あるからなんでしょうかね?アルバムのジャケットとかとてもかっこいいじゃないですか、いつも。
Keiko: ジャケ買いされちゃうとたしかにそういう印象あるかもしれない(笑)。
Hikaru: おちゃらけもするしねえ。
Wakana: いつも楽しいのに(笑)。
――それが魅力なんでしょうね、スイッチが入った時のKalafinaには誰も追いつけないというか。
Keiko: 曲が凄いので、このままだと歌えない所はあるかもしれないですね(笑)。 そのままいくぞー!っていうのは、無理ですよね。
Wakana: いつもMCでみんなで大笑いした後にKeikoが「さて……」って仕切りなおすんですよ、ありがとう……っていつも思ってるよ(笑)。
――グッズ紹介のコーナーも楽しいです。
Hikaru: あれは素ですね、本当にアドリブで何も考えてないです(笑)。
Keiko: 何も事前に聞かないで私達も楽しんでいるので、お客さんと一緒ですね、あそこだけは。
――本当に、いろいろな人にKalafinaを伝えられたらなぁとは思いますね。緊張しないで見てもらいたいというか。
Keiko: そうですね! 私たちは音楽エンターテイメントみたいなモノを作りたいと思っていて、楽器が歌と同じ主旋律を奏でていることとか、歌から楽器にメロディを引き継ぐようなものが凄く多くて、歌も楽器の一部みたいな捉え方をしている部分もあるんです。なので、今回のアリーナの大きな会場でも音のクオリティは絶対に落としたくない、そこにこだわったものになると思います。歌が奏でる音楽、楽器が奏でる音楽、照明が奏でる音楽、映像が奏でる音楽、全てが「音楽」でつながっているエンターテイメントにしたいんです。見に来てくれた人が「こんな所でも音楽が響いていたんだ」っていうのを聴覚だけで無く視覚でも感じられるものにしたいので、怖がらず初めましての人も見に来てもらえたらと思いますね。
Kalafina 撮影=菊池貴裕
撮影=菊池貴裕 インタビュー・文=加東岳史