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深淵な音の響きと疾走感あふれるリズム、そしてせつない情感をつむぐ繊細なメロディが鳴り響く。
2016年3月21日(月・祝)、東京国際フォーラム ホールAにて「Yuki Kajiura LIVE Vol.#13 “~featuring SWORD ART ONLINE~"」が開催された。
このイベントは、作曲家の梶浦由記が2008年から実施しているライブシリーズ。彼女が手掛けてきた楽曲をバンドメンバーと生演奏で披露しているというものだ。
その13回目となる今回はシリーズ初の作品限定ライブ。TVアニメ『ソードアート・オンライン』シリーズの劇伴(BGM)をバンドの演奏で披露するというものだった。
会場となった東京国際フォーラムのホールAには約5000人のファンが集まり、大きな拍手とともにその演奏を楽しんだ。
ステージが暗転すると梶浦由記とバンドのメンバーが登壇。梶浦は大きな身振りでピアノを叩くとギター、ベース、ドラムとパーカッション、マニュピレーターで構成されたバンドは精確にリズムを刻んでいく。
今回はヴァイオリンとヴィオラ、チェロによる今野均 Stringsが参加し、2人のホルンが参加。4人の歌姫とともに、バンド編成でアレンジした楽曲を演奏したのだ。
ライブの始まりを告げる一曲目は作品のメインテーマ曲とも言える「swordland」(第1期BGM)、そこから妖精の空中戦を描いた「aerial fight」(第2期BGM)。立て続けに人気曲を続け、会場を一気に盛り上げていく。
会場は梶浦ファンだけでなく、『ソードアート・オンライン』のファンも多数来場していた。そんな多彩なファンに、梶浦は最初のMCで今回のライブの楽しみ方をアドバイス。
「今回はインストゥルメンタル曲(ボーカルなしの演奏曲)が中心のライブになります。もしかしたら、インストゥルメンタル曲の多いライブに参加したことのない方もいらっしゃるかもしれませんが、純粋に音楽を追いかけたい人はメロディを演奏しているプレイヤーさんに注目してください。プレイヤーさんは隠れてカッコいいことをしていたりするものなので、あえてメロディを追わずに、たとえばドラマーだけを見るとか、そういう楽しみ方もあります。もちろん目を閉じて音を聴くのも良し、『ソードアート・オンライン』の名シーンを思い出しながら曲を聴くのも良し。自由に楽しんでいただければと思います」。
ライブ会場の電光掲示板には、演奏中の曲名が表示される。しかも、数曲演奏するごとに、梶浦が演奏した楽曲の解説を語ってくれる。 まさに作品ファンも音楽ファンも肩ひじ張らずに楽しめる劇伴ライブとなっていた。
前半は「town in the morning」や「the first town」のような、いわゆるゲームの世界をイメージした楽曲も披露。梶浦のゲームへの想いや、バンドメンバーをRPGのキャラクターに例えて紹介するなど、楽しいトークを交えてライブは進行していく。
中盤では、梶浦のピアノから始まる感動的なバラード「a tender feeling」を披露。そこから《ファントム・バレット》編で流れたヘヴィなサウンド「another state of emergency」や「Death Gun」「shoot'em up!」を次々と披露。『ソードアート・オンライン』の音楽の広がりを表現した。
梶浦は事前のインタビューで自分のサウンドが「リズムオリエンテッド(リズム中心)」であると語っていた。《アインクラッド》編の劇伴はRPGらしい王道のリズム、《フェアリィ・ダンス》編の劇伴は空を舞台《アルヴヘイム・オンライン》とした飛翔感あふれる速いリズム、そして《ファントム・バレット編》の劇伴は銃の世界《ガンゲイル・オンライン》ではヘヴィなリズム……と楽曲のテンポやリズムで世界観を表現しているのだという。
まさしくこのライブでは、その多彩なリズムを存分に楽しむことができた。梶浦のアドバイスのとおり、メロディや分厚い弦の響きに耳を傾けるだけでなく、ドラムやパーカッション、ベースに注目するだけで、その楽曲に込められた豊饒さを体感することができるだろう。
後半は「aincrad」(第1期BGM)や「peace,again」(第3期BGM)など作品のエピソードを思い出すような印象的な楽曲を演奏。本編で使われている楽曲をレコーディングしたときと、同じメンバーがステージ上で結集してこともあり、作品世界がリアルタイムで再現されるような印象が味わえるのだ。
アンコールも含めて全30曲。『ソードアート・オンライン』に対する愛が詰め込まれた約2時間。
梶浦は最後に原作の『ソードアート・オンライン』最新刊と2017年に公開される『劇場版ソードアート・オンライン –オーディナル・スケール-』への期待を語り、今回のライブを締めくくった。豪華なメンバーと充実した演奏。そして梶浦の解説や楽しいトークも満喫できたライブだった。
バンドメンバー
FictionJunction
Piano・Keyboards:梶浦由記
<Musicians (FRONT BAND MEMBERS)>
Guitar:是永巧一
Drums:佐藤強一
Bass:高橋“Jr.”知治
今野均 Strings
Violin:今野均
Violin:藤堂昌彦
Viola:生野正樹
Cello:西方正輝
Flute:赤木りえ
Percussion:中島オバヲ
Horn:岡本彬・丹羽裕樹Manipurator:大平佳男
Vocal:Remi・KAORI・WAKANA・YURIKO KAIDA