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アニカンレポート
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全国ツアーに先駆けて開催したFictionJunction YUUKAライブ
YUKI KAJIURA LIVE vol.#11
FictionJunction YUUKA 2days Special
2014年2月9日(日)【東京】中野サンプラザ
全国ツアーに先駆けて開催したFictionJunction YUUKAライブ
東京では45年ぶりという積雪量を記録した2月8日(ちなみに翌週には関東甲信で過去100年で一番という大雪を記録)、中野サンプラザでFictionJunction YUUKA(以下FJY)の『2days Special』が開幕。続く2月9日と合わせて、YUUKA(南里侑香)はかつて歌った曲を、近年のライブで培った経験を元に、より力強く歌い上げていった。
2日目となる9日にYUUKAは、「密度の濃い時間を一緒に楽しめたら」と口にしたが、本当にその言葉通りのライブだった。ヴォーカルがたった一人というスタイルは、梶浦由記ライブでは『Yuki Kajiura LIVE vol.#4』のPart 1以来ではないだろうか。それもやはりFJYによるライブであったが、9日のスタートは同じ、「circus」「aikoi」「Silly-Go-Round」という始まりで揃えてきた。
しかし、同じ構成は最初のMCまでで、#4よりも遥かに濃密な時間が過ぎて行くこととなる。その口火を切ったのが「cradle」。FJY名義の曲ではないが、TVアニメ『MADLAX』で使われた曲だ。そこから4曲が連なり、梶浦由記が称するところの「しっとりセクション」が終わる。
次にバンド紹介を挟んで、観客に贈られたのは「ピアノ」。演奏前に梶浦は、「ピアノと歌だけでできることってすごく果てしなく大きな気がして、ピアノと歌だけの曲を作るのが好きなんです」と話した後、ある映画(『ピアノ・レッスン』)ポスターから「すごく想像力をかきたてられて」作った曲と説明。ただ、昔に見た時と「自分の記憶の中にあるポスターとは全く違って」いる、「そういう、自分の中に残された断片が自分の中でアレンジされて、そこから曲を作ることもよくある」と語る。そして真の意味のFictionJunction YUUKAとして(つまり二人だけで)「ピアノ」を奏でた。
その後、「inside your heart」まで歌うと、今度は「私のしゃべる番」ということでYUUKAが「inside−」についてのエピソードを語る。YUUKAによると、二年ぐらい前、料理教室で一緒になった女の子から、その教室後にご飯に誘われたそうだ。そこで彼女から、アニメが好きで、音楽が好きで、という話をされ、さらには、学生時代にTVで聴いた曲がすごく気に入って買いに行ったことがある、その曲が「inside−」だったと教えられたのだとか。その子とはそれから友人として続いているのだが、YUUKAはその時にすごく「時間」というものを感じ、「時間を経ても音楽とか作品がつないでくれる縁があるんだ」と実感したと話す。
「それがすごく嬉しかったことを今回ステージで歌っててふっと思い出しました。音楽っていいなってあらためて思って(涙ぐみながら)……泣いちゃいました」(YUUKA)
本編ラストには、YUUKAと梶浦由記が初めて二人で仕事したという「聖夜」を。南青山少女歌劇団の一員だったYUUKAが主役の一人として立ったミュージカルの主題歌であり、FJYの1stアルバム『Destination』にも収録された曲だ。そして、アンコールの最初は「二人で“ふたり”を」(梶浦)。演奏後、梶浦はこう語る。
「演奏中、素敵な顔で聴いてくださってる皆さんをガン見しながら(笑)、“10年か”って思って。もしかしたら今日初めて聴いてくださった方もいるかもしれないし、レコーディングしたばかりの頃に聴いてくださった方もいるかもしれない。でも、年月が経って集まって、一つの曲を聞いてくれているということが尊い気がして。勝手に感激してしまいました。それだけで10年間いろんな曲を作ってきた甲斐がありました。望むらくは、(梶浦が作った曲に)何か一つ思い出があって、それをここに持ち寄って、その曲を私達が演奏して、思い出を思い浮かべながら聴いてくれたとしたら、それはすごく素敵なことじゃないかな、と思いました」(梶浦)
しかし、誰よりも各曲に思い出があるのは梶浦とYUUKAであり、しかもその思い出を愛しいと思っている、ということが伝わってきたし、そこに幸せのお裾分け的な感覚を得た。梶浦由記音楽活動20周年の陰で、FJも10年という節目を迎えており、20周年に対して『Yuki Kajiura LIVE vol.#10“KajiFes.”』という宴を催したように、FJを慈しみ愛でるための場、出発点であるFJYを振り返る場がこの二日間だったのかと、梶浦・YUUKAが語る言葉と音楽に気づかされた。「二人で作り上げる」という作業を続けてきた10年が、密度が濃く、二人を強固に結びつけたのだと感じるライブだった。
FictionJunction YUUKA 2days Special
セットリスト(2月9日)
M-01. overture 〜 circus
M-02. aikoi
M-03. Silly-Go-Round
---MC---
M-04. cradle (MADLAX O.S.T より)
M-05. 誰もいない場所
M-06. しずかなことば
M-07. 約束
M-08. angel gate
---MC---
M-09. ピアノ
M-10. 焔の扉
M-11. 光る砂漠
M-12. inside your heart
---MC---
M-13. blessing
M-14. romanesque
---MC---
M-15. 荒野流転
M-16. 記憶の森
M-17. cazador del amor
M-18. nowhere
---MC---
M-19. 聖夜
---Encore---
EC-01. ふたり
---MC---
EC-02. 暁の車
Text/清水耕司(ボーグナイン)
2014/02/27 11:00:00 ライブレポート