特集
皆さんに贈り物をあげる側でいられたら―織田かおり『Gift』リリースインタビュー(前編)
インタビュー
2017/08/03
ソロデビューから10年。ソロシンガーとしての活動のみならず、数々のプロジェクトへ参加し、その歌声で多種多彩な世界を表現してきた織田かおりさんが、7月26日に4thアルバム『Gift』をリリース。ニジ★スタでは、約1年ぶりのアルバムとなるこの作品のリリースにあたってインタビューを敢行。前編ではアルバムのコンセプトや、リード曲の話題を中心に語っていただいた。
【profile】
梶浦由記ソロプロジェクト『FictionJunction』への参加を皮切りに、サウンドクリエイターRevoの幻想楽団
『Sound Horizon』に参加。近年は人気のアーケードゲーム「Gunslinger Stratos」の楽曲に参加する等、
その非凡な歌唱力は多くの関係者から注目を浴び、数々のプロジェクトからオファーを受ける。
ソロ活動では、女性向け人気ゲームブランド・オトメイトから発売のゲーム「AMNESIA」、「忍び、恋うつつ」、
「猛獣使いと王子様」等、各シリーズの主題歌を多数担当し、男性ファンのみならず多くの女性ファンからも支持される。
2013年頃よりライブを中心にソロ活動を本格的に開始、2016年4月27日に2年ぶりの3ndアルバム「Make it」をリリース。活動範囲は日本国内にとどまらず、ドイツ、香港、中国など海外イベントにも出演。
今最も注目を浴びているアーティストの一人である。
現在キッズステーションでOA中の音楽番組「アニぱら音楽館」レギュラー出演中!!
どストレートな言葉を乗せた、かつてないほど爽やかなリード曲
今回のアルバムのコンセプトは、どのようなものになったのでしょう?
織田 タイトルの通り、「みんなに贈り物を届けたい」っていうところから始まったアルバムなんですよ。私は普段、ライブのお客さんやCDを買ってくださっている方に、お手紙とかで「元気もらってます!」とか言っていただくことが多いんですけど、実はそれで私のほうがいろんなものをもらってしまっているように感じているんです。いただくことはすごくうれしいことなんですけど、やっぱりどちらかと言うとあげる側でいたいなという気持ちが普段から強いので、「何か贈り物はできないかな?」と思ったんです。それで、普段自分が贈り物として作っているCDを「『Gift』っていうコンセプトでシンプルに作るのが、今いちばんリアルな感じでいいのかな?」と思って、コンセプトとタイトルはすぐ出てきたんですよ。
では、新曲もそのコンセプトのもとで?
織田 いや、新曲は今回5曲収録されるんですが、全部が全部“贈り物”っていうテーマだと、5個のプレゼントはちょっと形として強すぎるかなって。
なるほど。重すぎるというか。
織田 そうなんです。でもそれぞれにいろんなメッセージを込めていますし、応援ソングだったり自分自身と向き合う曲が多いので、結果としておひとりおひとりの心にそういう何かを与えられたら、うれしいですね。
受け取る人の解釈次第で、もしかしたら“Gift”になりうるかもしれない。
織田 はい。でもリード曲になるアルバム最後の曲『Give it to you』には、そういう想いがすごくストレートに込められているかもしれませんね。
たしかに。歌詞も非常にストレートな言葉が紡がれていますし。
織田 ちょっと恥ずかしいぐらい、ストレートな歌詞にしてしまって……自分で朗読するのは、ちょっと恥ずかしいかもしれません(笑)。今まで自分で歌詞を書いたアルバムのリード曲は、割ともうちょっと暗いところがあったり、内面的なというか主観的なものがすごく多かったんですよ。でも今回は、その主観の中でも「普段だったらちょっと恥ずかしくて言えないことを、今日はみんなにストレートに言わせていただいてもいいですか?」「贈り物、させていただいてもいいですか?」というところで書き進めていったので、あえてストレートすぎる感じにしているところもありますね。
その曲がアルバムの最後に来るというのが、すごくいいと思います。
織田 ありがとうございます! この曲は元々最初にフェードアウトするっていうお話があったので、ラストにしたんですよ。最近、昔よりもフェードアウトの曲って減った気がしませんか?
そうですね。世の中に出てる曲自体の数が。
織田 でも、バンドモノとかだと「その先のソロが聴きたいのに!」っていうところでいい感じで絞られていくあの何とも言えない悔しい思いと、「あぁ!」っていうワクワク感と……そういうのがアルバム最後にあったほうが、「また頭から聴こう」って思えるんじゃないかな? と思ったんです。そのおかげで、結果的に最後に言うべき言葉を置けたなっていう感じでしたね。
この曲のレコーディングのメイキング映像では、「普段、こんな爽やかな曲を歌ったことがない」と言ったことをおっしゃっていましたが。
織田 そうですね(笑)。そもそも今まで、自分の中で「風が抜けるような感じ」とか「自然に振る舞えるところ」みたいな爽やかな曲を、あえて作ろうとしたことがなかったんですよ。だから、最初いただいたときには「意外とこういうサウンドのロックはやったことがないかもな」っていう印象を持ちましたね。あと、バンドメンバーも私の知り合いの中では割と爽やかな布陣で……それは、たまたまだったんですけど(笑)。
MVの青空も草原も、楽曲に似合う爽やかさが非常に強い映像になっていましたが、今回はドローンも使って撮影されていたようで。
織田 初ドローンでした。でもあれ、結構音が大きくて怖いんですよね。「手を伸ばしたら巻き込まれちゃうんじゃないか?」っていうぐらい、遠くにいるのにすごく近くにいるような感じがして、「あ、この子怖い」って思って(笑)。そのときが、いちばんみんながざわざわした瞬間でしたね。
そのドローンからの映像も含めて、本当に美しい景色がバックに映し出されていて。
織田 いやぁ、もう今までにないくらい“大自然の中の織田かおり”だったので。今回は、撮影にあたって「リード曲が今までとちょっと違うサウンドの曲だから、目で見る情報としても今までにないぐらい爽やかで、笑顔いっぱいでいいんじゃないですか?」とお話させていただいたんですよ。それで、そういうのが出るところって、やっぱり緑や青空、太陽があるじゃないですか? 「欲を言えば、雲がちょっと晴れてく感じがいいですねぇ……!」みたいにも言ってたり(笑)。なので、まさに理想通りの風景ではありました。
木のたもとで歌われているシーンの太陽の光の入り方も、すごくきれいでしたね。
織田 ねぇ! でもあの日は、実は朝からドシャ降りだったんですよ。
え、そうなんですか!?
織田 はい。でも移動していくうちに晴れていって……。私、凄い晴れ女なんです。外ロケの日はいっつも朝天気悪いんですけど、私が外に出た瞬間にパッと晴れるんです。だから、どんな季節でも日焼け止め塗っていかないと、すぐに焼けちゃうんですよ。
太陽は手加減してくれないんですね。
織田 そうなんです。私、太陽苦手なのに愛されてるみたいなんですよ!(笑)。陽の光ですぐに肌が赤くなってヒリヒリしちゃうくらい太陽に免疫がないんですけど……まぁ、よく晴れますね。ライブも屋外でやるときは必ず晴れますし。だから、ドシャ降り予報なのは知ってたけど「行ったら絶対晴れると思うから、行こう!」っていうのをいつも前提に、よっぽどのことがない限りは屋外での撮影は必ず現場に行って判断するようにしていますね。
その撮影場所は、富士山の近くだとお聞きしたのですが?
織田 はい。ちょっとイメージとは違うので、「どっかのタイミングで富士山映っちゃわないかな?」って、ドキドキしてました。それに、晴れすぎて青空になっちゃうと画としては質感が違うようにも思っていたんですけど、そこまで晴れすぎたわけでもなくて。本当にすべてがいい具合に重なったように思ってます。
作家陣が“織田かおりをプロデュース”したアルバム新曲
じゃあMVの撮影でもそうですし、先ほどのお話だと、曲順の面でもいい意味で意図しない部分でハマっていったところもいろいろ多いんですね。
織田 そうかもしれないです。曲順っていろんな決め方があると思うのですが、私が「これだ!」と思って出しても「こことここは逆のほうがよかったな」って思う方もいるだろうし、楽しみ方って人それぞれだから毎回曲順には本当に悩むんですよ。でも今回の曲順は、割といい意味でクセ者な曲が多いのに、結果としてストーリーも繋がってたなって思うところがすごくあって、自分でもグッと来ました。
通して聴いて、「おぉ、すごいハマッた!」と。
織田 そうですね。「また新しい世界の道筋が、もう1個できたな」って思いまして。特に9曲目の『mindscape.』からラストにかけては、言葉としてもつながってる部分がすごくあるように感じましたね。
少々話は前後してしまうのですが、その『mindscape.』をはじめとした今回の新曲5曲が生まれた経緯を、改めてお伺いしたいのですが。
織田 今回の新曲は3名の作曲家の方々にお願いしたんですが、「それぞれに、織田かおりをプロデュースしてください!」というところで、お願いしたんです。だからよりいい意味で個性的な曲が増えたと思うんですよね。でも今回は、実は作っていただきたい楽曲の方向性をお伝えした方と、それをおまかせした方と両方いまして……。
それをお伝えした方は、どなたでしたか?
織田 バラード曲『for you』を作ってくださった、myuさんです。私はバラードを歌うことが多いという事もあって、普段はアルバムの新曲でバラードってほぼ作らないんですよ。でも『Gift』の中のmyuさんの曲が、すべてアッパーだったりちょっと暗めのハードなものだったので、「そうじゃないmyuさんの曲を、今回は新しく作っていただきたいです」というお願いをまずしたんです。
具体的には、どんな曲を依頼されたんでしょう?
織田 「とにかくメロディに力のある曲を」というお話はさせていただきまして。それと、「ミディアムっぽいのって最近myuさんの曲で歌ってないなぁ」とも、やんわりと(笑)。そしたら「そうだね、ミディアム作ろっかぁ」って……割とこういうゆるめのテンションの方なんですけど(笑)。でも、普段はいい意味で尖ったmyuさんの曲を歌うことが多かったんですが、すごく正統派の曲もたくさん書かれている方なので、今回はそういう一面を出してくださったのかもしれませんね。
逆に、方向性をおまかせした方は?
織田 なるけ(みちこ)さんとMANYOさんですね。MANYOさんには「アルバムのリード曲になる感じの」みたいに、すごくふわっと(笑)。でも「基本的には好きにやってください」と言った結果生まれたのが、『Give it to you』の爽やか路線なんですよ。MANYOさんの曲っていろんなタイプの曲があるんですけど、もっとハードなものとか、ちょっとプログレっぽいクセのある曲を私は歌う事が多くて、ああいう爽やかポップみたいな曲は歌ったことがなかったんですよ。だから「あ、MANYOさんが今の私に歌ってもらいたいサウンドは、そういう感じなのかな?」って受け取りましたし。歌ってもすごく楽しかったです。
じゃあそのおふたりに関しては、「こう来たか!」って驚いた曲も?
織田 すごくありました! 特になるけさんは……“なるけ三部作”、個性が凄いんですよ(笑)。
後編では、ラストで触れられかけた気になる“なるけ三部作”を深掘り。アルバム新曲について、さらに深く深く語っていただいています! ぜひ、お楽しみに!
発売情報
織田かおり4th Album『Gift』
2017年7月26日発売
【収録曲】
01. World's End Syndrome(PlayStation®Vita 用ゲームソフト「7ʼ scarlet」オープニングテーマ)
02. WORKING!!
03. Stole my heart(オトメイトレコード「おとどけカレシ」主題歌)
04. for you
05. 零れそうな月(PlayStation® Vita 用ゲームソフト「7ʼ scarlet」ユヅキ編エンディングテーマ)
06. 無限の DYSTOPIA(iOS & Android 用アプリ「宿星のディストピア」主題歌)
07. Theatrium(オトメイトレコード「Theatrium 虚像の庭」主題歌)
08. RUN-LIMIT(オトメイトレコード「RUNLIMIT」主題歌)
09. mindscape.
10. 希望の彼方へ(PlayStation®Vita 用ゲームソフト「Code:Realize ~祝福の未来~」エンディングテーマ 2)
11. サバンナの疾風
12. 星を繋いで(PlayStation®Vita 用ゲームソフト「ノルン+ノネット アクト チューン」エンディングテーマ)
13. Give it to you
2017.07.26 On Sale
【初回盤 DVD 収録内容】
01.Give it to you(Music clip)
02.World's End Syndrome(PlayStation®Vita 用ゲームソフト「7ʼ scarlet」オープニングムービー)
03. レコーディングオフショットムービー
04. 撮影オフショットムービー
初回限定盤
通常版