Kugayama
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http://www.yomiuri.co.jp/culture/special/donna/20151204-OYT8T50130.html
アニソンで世界中がハッピーに!
2015年12月04日 16時04分
アリーナなのに実家みたい
横浜アリーナという巨大な会場にいながら、実家に帰ってきたようなアットホームな気持ちになるのが不思議だった。
11月29日、横浜アリーナで開催されたJAM Projectのライブ「THE STRONGER’S PARTY」に行ったのだ。JAMはジャパン・アニメーションソング・メーカーズの略で、影山ヒロノブさんをリーダーに、遠藤正明さん、きただにひろしさん、奥井雅美さん、福山芳樹さん、そしてブラジル人メンバーのヒカルド・クルーズさんで構成されるユニット。今年結成15周年を迎え、ライブはそれを記念しての開催だった。私がJAMの皆さんと知り合ったのは2008年夏の世界ツアーのころだから、JAMの歴史のだいたい半分くらいを、ご一緒させていただいてきたことになる。
15周年にふさわしい迫力
満員のアリーナ中央には、会場を横断する大きな通路が設置され、そのセンターにメインステージ、通路の両脇の一段高いところにサブステージが配置された。ライブは、この巨大なエリアを5人のメンバーが、駆け回ったり、ジャンプしまくったりするエネルギッシュなもの。1曲目の「レスキューファイアー」から、いきなりセンターステージ周りで炎が噴き出すという15周年にふさわしい迫力満点の演出で、JAMの世界に聴衆を引き込んだ。中盤には特撮ヒーロー、牙狼がろも登場する豪華な展開。さらに、ブラジルからは、「6人目の戦士」であるヒカルドも駆けつけた。披露した楽曲は、実に、39曲。途中でしんどくなるのではないか、という不安がちょっとだけあったが、まったくの杞憂きゆうで、あっという間の4時間だった。
一大ジャンルになったアニソン
それにしても、巨大なライブで「アットホームな気持ち」という表現は奇妙かもしれないが、本当に、その表現がぴったりだったのだ。言い換えるなら、初心を思い起こさせられたとか、癒やされた、ということになろうか。そう思わされるのは、JAMのライブが、決して商売優先の「膨張主義」みたいなものに陥っていないからだろう。JAMが結成されてからの15年間で、アニソンを取り巻く世界は大きく変わった。15年前には子供向けの音楽くらいに思われていたものが、今や日本音楽界での一大ジャンルとなり、ビジネスとしても一定の成功を収めるようになった。それ自体は喜ばしいことだ。だが、その波におかしな乗り方をして、音楽をビジネスの尺度でだけ測るようになってしまったら、最優先すべきは、すべてにおいて「右肩上がりで」ということになってしまう。より多くの利益、より多くの観客、より広い会場、というように。
なぜアニソンを歌うのか
でも、JAMは、右肩上がりや膨張の論理とは違うところで動いている、と私は思っている。アニソンに込める前向きなメッセージは変わらないし、なぜJAMとして活動するのか、なぜアニソンを歌うのか、という部分に、終始一貫、ブレがない。08年にバンドも連れずブラジルでライブを行った当時と、まったく変わらず、真っすぐでピュアな思いで歌を紡いでいる。だから、聴く側の私まで、初心を思い出すような気持ち、安心した気持ちになることができるのだと思う。会場こそ広いけれど、それは、多くのお客さんに音楽を聴いてもらうため。右肩上がりの論理で広い会場を選ぶのとは、似て非なるものなのだ。ライブの終盤、影山さんが「いつの日か世界中のみんながハッピーになれる日がくることを願って、僕らはアニソンを歌い続けます」と話したが、その言葉に、すべてが集約されていると言えるだろう。
美しい夢に酔いしれた
今回のライブには、アジアはもちろん、ヨーロッパや北米、南米からも多くの客がやってきていた。国籍が違う人々が同じ会場で同じアニソンに熱狂し、ジャンプし、叫ぶ。その光景を見る時、私は、こうして同じアニソンへの感動を共有するように、世界中の人が仲良くなれる日がくるかもしれない、という夢をみることをやめられない。もちろん、かなえることが難しい、遠い夢である。
それでも、一人が掲げるサイリウムは、ただの一個の発光体だけれど、会場に集う多くの人が音に合わせて振れば、美しい光の波となる。同じように、勇気や元気、平和や共存という思いを乗せたアニソンに共感する人が世界中に増えていけば、みんながハッピーになる世界に近づいていくことができるのではないだろうか。そんな美しい夢に酔った横浜の夜だった。
2015年12月04日 16時04分Copyright © The Yomiuri Shimbun
アニソンで世界中がハッピーに!
2015年12月04日 16時04分
アリーナなのに実家みたい
横浜アリーナという巨大な会場にいながら、実家に帰ってきたようなアットホームな気持ちになるのが不思議だった。
11月29日、横浜アリーナで開催されたJAM Projectのライブ「THE STRONGER’S PARTY」に行ったのだ。JAMはジャパン・アニメーションソング・メーカーズの略で、影山ヒロノブさんをリーダーに、遠藤正明さん、きただにひろしさん、奥井雅美さん、福山芳樹さん、そしてブラジル人メンバーのヒカルド・クルーズさんで構成されるユニット。今年結成15周年を迎え、ライブはそれを記念しての開催だった。私がJAMの皆さんと知り合ったのは2008年夏の世界ツアーのころだから、JAMの歴史のだいたい半分くらいを、ご一緒させていただいてきたことになる。
15周年にふさわしい迫力
満員のアリーナ中央には、会場を横断する大きな通路が設置され、そのセンターにメインステージ、通路の両脇の一段高いところにサブステージが配置された。ライブは、この巨大なエリアを5人のメンバーが、駆け回ったり、ジャンプしまくったりするエネルギッシュなもの。1曲目の「レスキューファイアー」から、いきなりセンターステージ周りで炎が噴き出すという15周年にふさわしい迫力満点の演出で、JAMの世界に聴衆を引き込んだ。中盤には特撮ヒーロー、牙狼がろも登場する豪華な展開。さらに、ブラジルからは、「6人目の戦士」であるヒカルドも駆けつけた。披露した楽曲は、実に、39曲。途中でしんどくなるのではないか、という不安がちょっとだけあったが、まったくの杞憂きゆうで、あっという間の4時間だった。
一大ジャンルになったアニソン
それにしても、巨大なライブで「アットホームな気持ち」という表現は奇妙かもしれないが、本当に、その表現がぴったりだったのだ。言い換えるなら、初心を思い起こさせられたとか、癒やされた、ということになろうか。そう思わされるのは、JAMのライブが、決して商売優先の「膨張主義」みたいなものに陥っていないからだろう。JAMが結成されてからの15年間で、アニソンを取り巻く世界は大きく変わった。15年前には子供向けの音楽くらいに思われていたものが、今や日本音楽界での一大ジャンルとなり、ビジネスとしても一定の成功を収めるようになった。それ自体は喜ばしいことだ。だが、その波におかしな乗り方をして、音楽をビジネスの尺度でだけ測るようになってしまったら、最優先すべきは、すべてにおいて「右肩上がりで」ということになってしまう。より多くの利益、より多くの観客、より広い会場、というように。
なぜアニソンを歌うのか
でも、JAMは、右肩上がりや膨張の論理とは違うところで動いている、と私は思っている。アニソンに込める前向きなメッセージは変わらないし、なぜJAMとして活動するのか、なぜアニソンを歌うのか、という部分に、終始一貫、ブレがない。08年にバンドも連れずブラジルでライブを行った当時と、まったく変わらず、真っすぐでピュアな思いで歌を紡いでいる。だから、聴く側の私まで、初心を思い出すような気持ち、安心した気持ちになることができるのだと思う。会場こそ広いけれど、それは、多くのお客さんに音楽を聴いてもらうため。右肩上がりの論理で広い会場を選ぶのとは、似て非なるものなのだ。ライブの終盤、影山さんが「いつの日か世界中のみんながハッピーになれる日がくることを願って、僕らはアニソンを歌い続けます」と話したが、その言葉に、すべてが集約されていると言えるだろう。
美しい夢に酔いしれた
今回のライブには、アジアはもちろん、ヨーロッパや北米、南米からも多くの客がやってきていた。国籍が違う人々が同じ会場で同じアニソンに熱狂し、ジャンプし、叫ぶ。その光景を見る時、私は、こうして同じアニソンへの感動を共有するように、世界中の人が仲良くなれる日がくるかもしれない、という夢をみることをやめられない。もちろん、かなえることが難しい、遠い夢である。
それでも、一人が掲げるサイリウムは、ただの一個の発光体だけれど、会場に集う多くの人が音に合わせて振れば、美しい光の波となる。同じように、勇気や元気、平和や共存という思いを乗せたアニソンに共感する人が世界中に増えていけば、みんながハッピーになる世界に近づいていくことができるのではないだろうか。そんな美しい夢に酔った横浜の夜だった。
2015年12月04日 16時04分Copyright © The Yomiuri Shimbun